2018年4月

太幹に引つ付くやうに初桜

桜愛づ根元を踏むは慎みて

桜川挟みベンチが向き合へり

対岸の桜の方が良く見えて

花吹雪浴びて時告ぐ花時計

飛花落花秒針急ぐ花時計

黄砂降るテロ警戒の浄水場

桜並木切株で飛ぶ木の番号

吹き込みし落花掃き出す町工場

大嚔花のトンネル反響す

テニスラリーの音心地良く春の昼

花屑を撥ねつつ鳩が地をつつく

朝桜リトル野球は最終回

朝桜お顔摩耗のお地蔵さん

一面は屋根這ひ上る棚の藤

桜並木これより団地街に入る

閼伽桶に落花一片飛び込めり

花屑に覆ひ尽くされ墓更地

結界の竹の内外花吹雪く

ふらここの台座のペンキ剥げ落ちて

タイムカプセル沈めて凪の春の海

盤石が春の神戸の地に据わる

明石橋春の灯の連珠なす

纜の突つ張りきるを蟻が攀づ

団地果て桜並木も果てにけり

めまとひが立てど屈めど眼の前に

花屑を火袋に溜め石燈籠

誰も居ぬ公園ふらここ漕いでみる

2018年3月

黙すのみ漢ふたりの日向ぼこ

日時計の石の指時針かげろへり

眩しけれ白内障に風光る

ふはと吹きわつと吹き来る春の風

春闘の部屋に創業者の銅像

春闘の妥結に労使握手無く

先づ名前書けと受験子送り出す

目を見ろと言われ落第告げられる

羽根抜かれ飛べぬ白鳥水温む

梅早し靴音響く石畳

膝に乗る犬の爪切る日向ぼこ

赤競ふ苺売り場と肉売り場

着膨れの身体ごと押す手押ドア

啓蟄の体あちこちこそばゆし

2018年1.2月

ネクタイの結ひ方忘れ初鏡

風花が意思あるごとく吾が手避く

よく見れば番が分かる鴨の群

来し方に浮気はあらず寒の紅

歳時記に吾が句を見付く春こたつ

重ね着の一着脱げど着膨れて

寄鍋を独り住まひは料らずと

近寄れば後ろ向きなる冬薔薇

昼食はおにぎりひとつ枯芝生

地に凧を擦らせ走り揚げんとす

闘癌の友と語らふマルクス忌

今日は何の日寒晴れの日章旗

ぶらんこの台座は雪に埋れたり

寒稽古黒擦り切れし帯を締め

廃品に俳誌を束ね日脚伸ぶ

白刃が寒気斬り裂く居合道

寒稽古板間に正座崩さざり

着膨れて死んだ噂の漢来る

日向ぼこ俺が死んだと噂 され

人絶えし時に渡さる愛のチョコ

愛のチョコ渡すを見ない振りで見て

剪定がなされ俯く薔薇の棘

氷上の画面弾ける道産子弁

2017年12月

走り根に舗装路亀裂落葉掃く

川涸れて中洲のニ島繫がれり

寒燈が偈のみを照らす夜の寺門

枯園に対峙太陽の塔と吾

太陽の塔目ざし来る渡り鴨

裸木が太陽の塔真似て聳つ

寒岩を湿らせ水車回りをり

敷紅葉陸と池との境消す

ポケットに収める拳梅蕾む

枯園の鉄モニュメント指弾せり

ひと枝は折れしまま咲く冬桜

北枝に咲くは少なく冬桜

冬桜幹に樹木医治療痕

冬桜意外に柔き蕾なる

枯園に漢がソフトクリン舐む

太陽の塔目指し来る渡り鴨

鐘の音が素つ気なく鳴る枯野寺

体操と覚しき動き日向ぼこ

聖樹の四囲豆球埋めし模擬の雪

御身拭微笑のままに魂抜かれ

迷子らしサンタの服で児が泣けり

その中に寂しき笑顔年忘れ

カミソリの切傷著く寒き顔

2017年11月

冬日向わが影刻む五線塀

露けしや朝の挨拶巫女に受け

正五位と刻む自刃碑鵙が啼く

句碑かもと寄れば露けき岩なりき

石刻に寄付一千万木の実落つ

淀君が祭神の宮紅葉散る

御火焚祭仁徳帝を祀る宮

腰痛の腰折り祈る冬社

冬温し御伽の国のラブホ街

何思ひ縁切坂の落葉掃く

走り根に舗装路亀裂落葉掃く

草虱古戦場にて付いたらし

発掘が果てて白露の土を埋む

重さうに落葉掃く音聞こえ来る

童謡の歌詞と似つかず寒鴉

MRIの音を冷たき楽と聴く

短足のズボン数多の草虱

鵙鋭声自刃碑直下活断層

姫神の島には生えず泡立草

枯野道見知らぬ美女に会釈され

ビリっと来る腰痛注射冬に入る

亀虫がスマホ接写に臭放つ

赤い羽根付けてくれずに手渡され

2017年10月

秋彼岸墓に真向ひ犬が坐す

隠れ耶蘇の村に鎮守社稲稔る

大帰燕奈良にこんなにをつたのか

猪鍋囲むどいつも俳句無関心

朱に混じり白が赤らむ曼珠沙華

初めてと言つて間を置くとろろ飯

秋澄めり大音声の喝浴びて

小芋食ぶ箸で挟めず突き刺して

背後から妻のため息今日の月

今年よりこの畦に咲く曼珠沙華

薔薇園にワインの試飲会開く

都心の川日向日陰の水澄めり

小鳥来る島に秘仏の弁財天

松は色変へず仏は秘するまま

遠州庭水澄む池は琵琶湖模す

秋の雲像は浅井の三姉妹

姉川の右岸左岸に泡立草

嘲りの冷たき顔も多顔仏

星流る闇に紛るる竹生島

団栗が豊公像の頭に当る

鵙鋭声句碑の据われる古戦場

姫神に守られ淡海水澄めり

2017年9月

蝉声がゴルフ中継消すと止む

殉教者の里を迸る落し水

色変へぬ松船津屋は婚式場

碑に夢と刻まれ夜学校

給食が夕食となる夜学生

夜学子が闇の使はぬ棟を見る

衝突入と言うて家内に会ひに来る

赤とんぼ投げし砲丸さつと避く

種無きをかざし確かむ葡萄粒

秋灯し首にひやりと黒真珠

隧道を抜ければ出石蕎麦の花

月昇る夫婦喧嘩はうやむやに

七十路が車席を譲る敬老日

雌岳より雄岳へ向けて登高す

放生の川は大河へ放生会

老妻と新米袋持ち上げる

腰痛は直立が楽天高し

秋空を穢しミサイル飛んだらし

2017年8月

草矢打つ偽と分かりし古九谷へ

敷板に鉈の傷跡竹切り会

林間学校最後の夜は肝試し

甚平の爺を上座に重役会

箸づかひ下手でぐちやぐち冷奴

アイスペールにずぼと差し込む冷酒瓶

箸置は疑似の氷塊夏料理

大蝉声橋渡りても大蝉声

朝顔が非常階段這ひのぼる

シャネル五番瓶は意外と武骨なる

居並ぶはみな生身魂小句会

ゆつたりと大阪締めや花氷

団扇にて丸亀城の天守指す

扇風機首を振らさずひとり占め

我が身をば突き刺すやうなシャワー浴ぶ

迎へ火が怒れる如く炎立つ

盆僧が野球中継佳境に来

苧殻火に近所の児等が寄つて来る

終戦日髪を真白く両陛下

2017年7月

両の掌を思はずを合す大瀑布

潜るより分け入る暖簾鰻食ふ

蘭鋳の品評白の金盥

蝮の頭砕けりゴルフドライバー

大阪弁鬼灯市で値切りだす

葭障子開けて広がる籐筵

自噴湖に鳰の浮巣が揺れてゐる

透明の瓶に無色の香水液

香水の瓶の黒きは男性用

シャネル五番瓶は意外と武骨なる

籐寝椅子置きて縁側通り難し

千尋の谷に飛ばさる夏帽子

テレビから溢れ来る如梅雨出水

梅雨晴間籠池邸を探し当つ

啼きしあと口開けしまま夏烏

金鳥の古いポスター瓜番屋

漆木に竹組み上げて漆掻く

水中で釣針刺さる囮鮎

鮎籠は花刺さぬまま夏座敷

水中眼鏡ふはふはふにやり女人の脚

ごちやごちやとぶらぶら昼の烏賊釣舟

避暑の宿夫の鼾は避けられず

傘立てに突込まれあり補虫網

草矢打つ偽と分かりし古九谷へ

敷板に鉈の傷跡竹切り会

薔薇垣を巡らす化粧品工場

視力検査緑樹に眼休ませて

2017年6月

師と共に机整頓夏期講座

園長に電車座れと遠足児

空豆の三粒に莢は大きすぎ

ハンカチを寸分狂ひなく四つ折り

スキップを古希で覚えて青き踏む

金扇に墨で寿春灯し

序の舞のゆるりゆるりと日の永し

ふらここを母へ漕ぐ度笑顔見す

木の枝に蛇が全長伸ばしきる

真似すれど全く似ざる河鹿笛

蝮の頭砕きしゴルフドライバー

蘭鋳の品評白の金盥

金魚掬ひ白き水槽剥げ露は

潜るより分け入る暖簾鰻食ふ

白シャツが吐き出る市庁昼休

片陰の凸凹そして無きところ

アンデスの赤塩ピリリ夏料理

梅雨の鬱硬くて裂けぬカレーナン

吾佇てば緋鯉近づきすぐ離る

その数は千二百株蓮の池

黄菖蒲が葉よりも低く咲いてゐる

葉脈は白くはならず半夏生

水中を縄で画せり菖蒲池

遠目には白き鳥止む泰山木

禁煙と柱に貼られ蓮見亭

品種名に惹かれて見詰む花菖蒲