2017年12月

走り根に舗装路亀裂落葉掃く

川涸れて中洲のニ島繫がれり

寒燈が偈のみを照らす夜の寺門

枯園に対峙太陽の塔と吾

太陽の塔目ざし来る渡り鴨

裸木が太陽の塔真似て聳つ

寒岩を湿らせ水車回りをり

敷紅葉陸と池との境消す

ポケットに収める拳梅蕾む

枯園の鉄モニュメント指弾せり

ひと枝は折れしまま咲く冬桜

北枝に咲くは少なく冬桜

冬桜幹に樹木医治療痕

冬桜意外に柔き蕾なる

枯園に漢がソフトクリン舐む

太陽の塔目指し来る渡り鴨

鐘の音が素つ気なく鳴る枯野寺

体操と覚しき動き日向ぼこ

聖樹の四囲豆球埋めし模擬の雪

御身拭微笑のままに魂抜かれ

迷子らしサンタの服で児が泣けり

その中に寂しき笑顔年忘れ

カミソリの切傷著く寒き顔

2017年11月

冬日向わが影刻む五線塀

露けしや朝の挨拶巫女に受け

正五位と刻む自刃碑鵙が啼く

句碑かもと寄れば露けき岩なりき

石刻に寄付一千万木の実落つ

淀君が祭神の宮紅葉散る

御火焚祭仁徳帝を祀る宮

腰痛の腰折り祈る冬社

冬温し御伽の国のラブホ街

何思ひ縁切坂の落葉掃く

走り根に舗装路亀裂落葉掃く

草虱古戦場にて付いたらし

発掘が果てて白露の土を埋む

重さうに落葉掃く音聞こえ来る

童謡の歌詞と似つかず寒鴉

MRIの音を冷たき楽と聴く

短足のズボン数多の草虱

鵙鋭声自刃碑直下活断層

姫神の島には生えず泡立草

枯野道見知らぬ美女に会釈され

ビリっと来る腰痛注射冬に入る

亀虫がスマホ接写に臭放つ

赤い羽根付けてくれずに手渡され

2017年10月

秋彼岸墓に真向ひ犬が坐す

隠れ耶蘇の村に鎮守社稲稔る

大帰燕奈良にこんなにをつたのか

猪鍋囲むどいつも俳句無関心

朱に混じり白が赤らむ曼珠沙華

初めてと言つて間を置くとろろ飯

秋澄めり大音声の喝浴びて

小芋食ぶ箸で挟めず突き刺して

背後から妻のため息今日の月

今年よりこの畦に咲く曼珠沙華

薔薇園にワインの試飲会開く

都心の川日向日陰の水澄めり

小鳥来る島に秘仏の弁財天

松は色変へず仏は秘するまま

遠州庭水澄む池は琵琶湖模す

秋の雲像は浅井の三姉妹

姉川の右岸左岸に泡立草

嘲りの冷たき顔も多顔仏

星流る闇に紛るる竹生島

団栗が豊公像の頭に当る

鵙鋭声句碑の据われる古戦場

姫神に守られ淡海水澄めり

2017年9月

蝉声がゴルフ中継消すと止む

殉教者の里を迸る落し水

色変へぬ松船津屋は婚式場

碑に夢と刻まれ夜学校

給食が夕食となる夜学生

夜学子が闇の使はぬ棟を見る

衝突入と言うて家内に会ひに来る

赤とんぼ投げし砲丸さつと避く

種無きをかざし確かむ葡萄粒

秋灯し首にひやりと黒真珠

隧道を抜ければ出石蕎麦の花

月昇る夫婦喧嘩はうやむやに

七十路が車席を譲る敬老日

雌岳より雄岳へ向けて登高す

放生の川は大河へ放生会

老妻と新米袋持ち上げる

腰痛は直立が楽天高し

秋空を穢しミサイル飛んだらし

2017年8月

草矢打つ偽と分かりし古九谷へ

敷板に鉈の傷跡竹切り会

林間学校最後の夜は肝試し

甚平の爺を上座に重役会

箸づかひ下手でぐちやぐち冷奴

アイスペールにずぼと差し込む冷酒瓶

箸置は疑似の氷塊夏料理

大蝉声橋渡りても大蝉声

朝顔が非常階段這ひのぼる

シャネル五番瓶は意外と武骨なる

居並ぶはみな生身魂小句会

ゆつたりと大阪締めや花氷

団扇にて丸亀城の天守指す

扇風機首を振らさずひとり占め

我が身をば突き刺すやうなシャワー浴ぶ

迎へ火が怒れる如く炎立つ

盆僧が野球中継佳境に来

苧殻火に近所の児等が寄つて来る

終戦日髪を真白く両陛下

2017年7月

両の掌を思はずを合す大瀑布

潜るより分け入る暖簾鰻食ふ

蘭鋳の品評白の金盥

蝮の頭砕けりゴルフドライバー

大阪弁鬼灯市で値切りだす

葭障子開けて広がる籐筵

自噴湖に鳰の浮巣が揺れてゐる

透明の瓶に無色の香水液

香水の瓶の黒きは男性用

シャネル五番瓶は意外と武骨なる

籐寝椅子置きて縁側通り難し

千尋の谷に飛ばさる夏帽子

テレビから溢れ来る如梅雨出水

梅雨晴間籠池邸を探し当つ

啼きしあと口開けしまま夏烏

金鳥の古いポスター瓜番屋

漆木に竹組み上げて漆掻く

水中で釣針刺さる囮鮎

鮎籠は花刺さぬまま夏座敷

水中眼鏡ふはふはふにやり女人の脚

ごちやごちやとぶらぶら昼の烏賊釣舟

避暑の宿夫の鼾は避けられず

傘立てに突込まれあり補虫網

草矢打つ偽と分かりし古九谷へ

敷板に鉈の傷跡竹切り会

薔薇垣を巡らす化粧品工場

視力検査緑樹に眼休ませて

2017年6月

師と共に机整頓夏期講座

園長に電車座れと遠足児

空豆の三粒に莢は大きすぎ

ハンカチを寸分狂ひなく四つ折り

スキップを古希で覚えて青き踏む

金扇に墨で寿春灯し

序の舞のゆるりゆるりと日の永し

ふらここを母へ漕ぐ度笑顔見す

木の枝に蛇が全長伸ばしきる

真似すれど全く似ざる河鹿笛

蝮の頭砕きしゴルフドライバー

蘭鋳の品評白の金盥

金魚掬ひ白き水槽剥げ露は

潜るより分け入る暖簾鰻食ふ

白シャツが吐き出る市庁昼休

片陰の凸凹そして無きところ

アンデスの赤塩ピリリ夏料理

梅雨の鬱硬くて裂けぬカレーナン

吾佇てば緋鯉近づきすぐ離る

その数は千二百株蓮の池

黄菖蒲が葉よりも低く咲いてゐる

葉脈は白くはならず半夏生

水中を縄で画せり菖蒲池

遠目には白き鳥止む泰山木

禁煙と柱に貼られ蓮見亭

品種名に惹かれて見詰む花菖蒲

2017年5月

生コンに落花ひとひら飛び込めり

ベランダに頬杖で見る春の月

花屑の溜り場滑台の下

風薫る千基の墓が南向き

介護車が行き交う団地朝桜

先歩く鳩のあと付き野に遊ぶ

残り鴨吾を呼ぶ如鳴き続く

蝶々に纏われなから漢来る

花吹雪全窓閉ざす泉布観

絢爛と造花の桜帝国ホテル

船上の楽が岸まで花見船

花人を吐き出し続く北門は

朝桜交番掲示事故死零

花人の入るをカウント造幣局

かげろひて柱ふにゃりとエンタシス

手で揉めど千切れざるなり春落葉

めまとひを払ふ漢の後に蹤く

メーデー果て野球チームが土均す

ふらここを七分で漕いで背押すは三

新樹公園三角野球なら出来て

2017年4月

六甲の水が貫く花の土手

花の川危険は赤く水位標

花の夕落花と紛ふベンチの鋲

夙川の尖る岩岩花筏

桜咲く支へ木太き治療樹に

桜狩さくら夙川駅降りて

掛軸は吉井の短歌花の宴

花の下スマホ操作に執しゐる

花の風朱の本殿は女神在す

花の風用事有りげな人は無く

貼紙にマンション反対大桜

青き踏み多佳子旧居を見下ろせり

人をらぬ多佳子の旧居椿落つ

初蝶が多佳子旧居を飛び回る

立看に期間修正桜祭

会釈には挙手の敬礼朝桜

花の雨吊り雪洞の列撓む

自転車がふらふら登る桜坂

絵踏の如多佳子の畑そつと踏む

作務僧が渡廊下の落花掃く

座りごち良さそな巌花の下

増水で死者出せし川花筏

町内の塵が集まる花の下

迷ひ入る路地行き止り大落花

マスクより洩れる鼻歌青き踏む

2017年3月

凍りゆく氷柱の尖の一雫

重さうに飛び上がたり残り鴨

赤箱に詰めるは紅き苺なる

遠目には梅と見紛ふ河津桜

添木され浪速に咲けり河津桜

白梅が河津桜に透きて見え

雑木伐採河津桜の植樹され

河津桜折るは懲役との告知

河津桜土手一粁を赤くせり

ランニング河津桜の土手に入り

コート前開けて河津桜道

高圧線交差の真下河津桜

水溜り又水溜り川涸れて

近寄りて地面と分かる枯れ芝生

宅配便のにいちやん走る春の雨

背凭れの有らざるベンチ芝萠ゆる

モンローの写真を壁に春灯し

血糖値下がれ下がれと青き踏む

残り鴨付かず離れぬ番なり

草萌えるジャングルジムの底地のみ

誓子忌を忘れて稀勢の里祝す

花の雨寄り添ふ誓子波津女句碑