2017年3月

凍りゆく氷柱の尖の一雫

重さうに飛び上がたり残り鴨

赤箱に詰めるは紅き苺なる

遠目には梅と見紛ふ河津桜

添木され浪速に咲けり河津桜

白梅が河津桜に透きて見え

雑木伐採河津桜の植樹され

河津桜折るは懲役との告知

河津桜土手一粁を赤くせり

ランニング河津桜の土手に入り

コート前開けて河津桜道

高圧線交差の真下河津桜

水溜り又水溜り川涸れて

近寄りて地面と分かる枯れ芝生

宅配便のにいちやん走る春の雨

背凭れの有らざるベンチ芝萠ゆる

モンローの写真を壁に春灯し

血糖値下がれ下がれと青き踏む

残り鴨付かず離れぬ番なり

草萌えるジャングルジムの底地のみ

誓子忌を忘れて稀勢の里祝す

花の雨寄り添ふ誓子波津女句碑

2017年2月

冬天に石塔尖る忠魂碑

雛飾る螺鈿の収納箱に載せ

凍神殿禰宜の祝詞が谺して

佐保姫が出づるや勅使門開く

磴五百登つて拝す居開帳

卒業す終に数III珍紛漢

用瀬の雛流さずに持ち帰る

園児らがバスに乗り来て野に遊ぶ

ゲートボールスティック猟銃袋に入れて来る

春月を見てゐて体痒くなり

剪定す両手に鋏チェーンソー

振り向けば寒鳩一羽附いて来る

品種ごと土色違へ薔薇芽吹く

朝日のみ当る庭隅梅白し

掛軸は誓子の一句冬座敷

二月尽まだ食べきれぬ愛のチョコ

ふらここを漕ぐを母親許さざり

重文の踏絵百万人踏みし

福参社に鳥居一万基

雁風呂をふと思ひ出す淀屋の碑

炉塞ぎの畳すぽつと嵌りけり

2017年1月

垣裡の落葉はトングにて抓む

年の湯に大の字となり浮かびけり

公園にストレッチ器具日向ぼこ

着膨れて幼が弾む如く駆く

冬帽を脱ぎて日の丸仰ぎけり

門松の底より水の浸み出せり

グラウンドをトンボで均す掃納

枯芝生海抜零の中之島

傍らに点滴パック日向ぼこ

遠目ではひとつに見える番鴨

旭日を背にして恵方より戻る

あきらかに酔つ払つてる初電話

番鴨だいぶ離れて鴨一羽

冬の川鉛光をしてをりぬ

三角凧嫌々しつつ揚がりゆく

初声を危険を知らす声と聴く

寒鴉喪服の吾を脅し啼く

川水を川に放水出初式

手套脱ぎ痛み確かむ薔薇の棘

燃やすもの盛り上げ広げどんど焚く

どんど火に前脚跳ねる神馬像

どんど火に四方の積雪退ざりゆく

丹田に多めに載せる寒灸

ビル間の隙より冬の日が差せり

冬日向の真つ只中に一ベンチ

華語で話し掛けらる赤きスエタの吾

2016年12月

神無月社は監視カメラ付け

格子のみ嵌る堂窓冬安居

危ないと白線を曳き餅を搗く

人を焼く建物の裏厚落葉

狩座に隣りてゴルフコースあり

黒表紙金字で猟銃所持許可証

先端は尖つてをらず猟銃弾

冬日和ゲートボールの乾きし音

冬雲を突き刺すごとく避雷針

大根焚のニュースを見つつ大根食ぶ

風止んで向きはそのまま枯芒

右側に着膨れの列エスカレーター

川普請中州にショベルカー据わる

黙祷す冬の太平洋に向き

何気なく振り向き気づく冬桜

明日も見に来ようと退る冬桜

寒風に涙を浮かべ真向かへる

垣裡の落葉はトングにて抓む

年の湯に大の字となり浮かびけり

公園にストレッチ器具日向ぼこ

冬帽を脱ぎて日の丸仰ぎけり

2016年11月

ドブ川に落ちて流れる桐一葉

菩提樹の実の生るを見す奈良ツアー

鳴る度に秋風鈴に目を遣れり

西虚子忌横川へ車道整備され

金木犀添木傾がせ香を發す

展示菊斎庭に鉢のめり込めり

白タオル絞りて並ぶ鰯雲

うろこ雲やうやく一万歩に達す

瀬の底の落葉を掃いて流れに載す

遠からずでも近からず夜学高

病む松の天辺で啼く冬鴉

秀吉の干し殺し受く冬城址

ハロインのお化けに児らの纏ひ付く

全天に一雲もなく冬三日月

装幀が毎年同じ日記買ふ

水難の墓碑一基立つ冬磧

白色の灯りを強くおせち売る

ふたり見て妻だけ見える流れ星

日記買ふ万年筆の縦書き派

叙勲者に知り合ひをらず文化の日

2016年10月

秋の日の広島球場真っ赤っか

秋の夜顔は浮かぶも名前出ず

又会うて微笑み交す猫じやらし

土手下の遊歩道まで秋出水

我が家の松色変らねど弱々し

手水場の水をいただく秋の蝶

三Kの業種と言はれ夜業せり

生え初めて耳掻きのごと猫じゃらし

長き夜を眠剤服みて寝るとせん

秋灯しカフカを生みし街暗く

漢逝く鵙が鋭声を発する中

今はもう背広は着ざり赤い羽根

幹に貼る伐採告知桜紅葉

残る蜂墓の供花より飛び翔てり

見上げたる天の高けれ真別処

御旅所に遊具据ゑられ小鳥来る

かぼす絞る果汁どばどば種コロリ

美術館抱きて山の粧へり

冬の野の遠き信号赤となる

並び方少し雑なり鱗雲

近寄るは鳩一羽のみ秋の風

高圧塔の裾濃く匂ふ金木犀

2016年9月

丁重に集ひは固辞す敬老日

揚がるより高きマンション遠花火

タイガース勝てば喜ぶ妻涼し

青芒永遠の祈りの右近像

桜落葉数個の磐に城跡碑

水撒いてグラウンドに礼野球終ふ

渋滞の車窓を小突く葛の蔓

信号は手動で操作青田風

大虚子の字余りの句碑鹿威し

大阪は地震少なし蚯蚓鳴く

錠剤は白ばかりなり暑気中り

小突いても崩れは見せず鶏頭花

箸墓を卑弥呼と信ず曼珠沙華

松手入塀越す枝はバサと伐り

突如降り止むる時あり雨台風

秋の日の広島球場真っ赤っか

秋の夜顔は浮かぶも名前出ず

又会うて微笑み交す猫じやらし

土手下の遊歩道まで秋出水

我が家の松色変らねど弱々し

曼珠沙華花が焦げるが如く枯れ

秋簾グループホーム物音無く

2016年8月

天花粉ポンポンお腹プルンプルン

猛暑日の朝のスーパー混み合へり

踊櫓の裡の梯子は垂直なり

白いぐちゃぐちゃ夏足袋と分からざり

妻の目の位置にメモ貼る冷蔵庫

吉利支丹隠れし里の凌霄花

この幹に添へ木は要らず百日紅

額の汗汗の腕で拭ひけり

一筋の涙が頬をサングラス

迎火に犬が退りて吠えだせり

盆僧がメモに朱を入れ家辞せり

夏帽子団扇代りに煽ぎをり

自動車が門火の間止まれ

斎場に太陽発電夏涼し

焼肉の真っ赤な炭火暑気払ふ

クーラーを逃げ出し門に涼みけり

相槌を妻に打ちつつ昼寝中

夏痩せの顔の柔和は変らざり

2016年7月

花蓮を包むごと葉が裏返る

半夏生葉の真つ白はつまらなし

日に焦げて花は茶色に泰山木

人参の赤が目立つて鱧の鍋

万緑の中に住友美術蔵

白日傘無法松碑に佇めり

茅の輪潜る嫌がる犬の綱引きて

茅の輪の奥賽銭箱がデンと座す

常の座に九十路の嫗句会涼し

空缶を集めてナンボ夏帽子

梅干が来るまで焼酎口付けず

潰れても被れば直る夏帽子

スーツ着て挙動不審の汗疹掻く

壁全てボトルキープの芋焼酎

玄関より次々脱いでシャワー浴ぶ

焼肉の真赤な炭火暑気払ふ

学舎に工事の覆ひ夏休

クーラーの無きエレベーター扉が閉まる

飛石の窪のみ打ちし水残る

青芝に土埃あぐ砲丸投

2016年6月

アイスクリン蓋の裏側舌で舐め

ハンカチを使ふ事なきひと日なり

滝殿が鉄筋に建て替りたり

律学を学ぶ大寺泉湧く

造り滝ロビーに嵌る巨大玻璃

缶ビール燃ゆる火星見遣りつつ

梅雨冷えの監視カメラと目を合す

春の波クルーズ船の波加へ

紅白の灯台抜ける船涼し

船上はジャズを演奏夏の航

夕凪に波を立たせる飛鳥II

絶壁が幼きあだ名髪洗ふ

白シャツに紙のエプロンカレー饂飩

ハンカチを貸して呉しが今の妻

草矢射る右手が飽きて左手で

脱ぎし靴自ら揃へ帰省せり

俳句らし夏の白帯墨走る

昼寝より覚めるやEU離脱なり

乾杯のジョッキごつんと鈍き音

白日傘松五郎碑に佇めり